日本全国行脚2025 博多から下関へ


船旅2日目は、船上でゆっくり過ごす。

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テレビでは刑事ドラマの再放送・・岡江久美子さんが主演。

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どこで見ても美しい夕日


門司港に朝5時半に到着。ゆっくりと船着場に入っていく船の看板に上がると、ほの明るむ東雲の空が見えた。

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船旅は悪くない。時間の余白が多い。気が赴くままに仕事したり、デッキに上がって海原を眺めたり。恋愛中のカップルにもお勧めだし、失恋した後の傷心旅行にも最適・・というまったく縁のない妄想を勝手にしちゃったりした。

今回のフェリーの弱点は、送迎バスがないこと。相乗りタクシーで門司駅まで。予約券一人440円。でも同乗客は私も含めて3人しかおらず、メーターは駅についた頃には3000円近くに(けっこう距離があった)。

運転手さん、朝5時すぎにユニフォーム着て、タクシーで来て(もう一台には一人だけ乗っていった)、正規運賃を下回る額。なんだか申しわけない。このせつなさも、旅につきもの。


JR門司駅から博多まで。地下鉄で天神まで行って、じょいふるで朝食(船の中で一風呂浴びればよかった)。2階クーラーが故障中とかで一階だけ。徹夜明けらしき若い男女が上機嫌で歌を歌い始めて、店員の老婦人に叱られている。いや、元気だ、頼もしい(笑)。

昼過ぎまでお世話になって、歩いて会場施設へ。

はて何人来てくれるか、でも一人でも来る人がいるなら続けなければという思いで、東京ではやってきた。東京から博多まで足を運んで参加者数名というのはいささか残念と思っていたが、予想以上に多くの人が来てくれた。普通の規模の勉強会になった。


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毎回話題が変わるのも面白いところ


終了後は、希望者一人ずつ面談。オーディブルを聞き始めたばかりという女性も、今日は方に向かう途中でイベント検索したらたまたま出て来て、予定変更してやってきたという女性も。今年もやってよかった、と思う。

終わって、再び一人に戻る。とたんに街の景色が“凡庸”になる不思議。物欲がないので、豪華なビルも賑やかしい店の装いにも、ぜんぜん関心が湧かないのだ。ひとまず博多駅に戻って、JRで西の方に行けるところまで行く。

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西へと急ぐ


夜9時半過ぎに下関に到着。下松(くだまつ)行きの接続列車があった。昔バイトで教えていた美術学校の学生が下松出身だったと、この駅に来るたびに思い出す。結局地元の下松に戻ったのだが、もう三十年近く経っている。どんな大人になっているのだろう。探しに行きたくなる。

前回の旅でもいただいた定食屋がギリギリ開いていたので、鯨汁定食をいただく。最後の客だが、ちゃんと調理して熱々にしてくれた。

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すきっ腹には熱い鯨汁が沁みます


この一帯も、かつては不夜城と言われた港町だったそうだが、人も減って、すっかり寂しくなってしまったそうだ。店の周りには、色を失って久しい商業施設が、夜の帳の中に音もなく沈んでいる。鮮やかな色が褪せて行って、陰の色が増えていく。日本中どこに行っても同じ。今のうちに目に焼きつけておきたい。

駅近くの宿に泊まる。野宿する予定だったが、5千円分の贅沢と堕落を選んでしまった。潮の匂いを嗅ぎながら夜を過ごせたであろうのに。出家たる私も弱くなってしまったものだ。


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夜の下関 前回来た時は腹痛に苦しむ20代の女性と遭遇して救急車を呼んだのだった あの人もどこかで暮らしているのだろうか


2025年8月上旬


未来の世界 日本全国行脚2025

 
今回の目的地は博多。東京からは新幹線が早いが、交通費がかさむ。飛行機は性に合わない。改悪された18切符だと、3日または5日の間に博多に着かねばならない。しかも移動中の車内では何もできない。バッテリーが切れたらPCもスマホも使えないし、本を読むのは目が疲れるし、運ぶのは重い。途中の宿泊に費用もかかる。

こうした事情を考慮して最後に選んだのは、フェリーの旅。東京有明から北九州・門司港へ。2泊3日の旅。船内なら電源の心配は不要。原稿を書くか、本を読むか。値段も陸路より安く浮く。

東京港フェリーターミナル行きのバスに乗る。八重洲、銀座、晴海を通って、有明ゾーンへ。途中、タワーマンションの群れ(広大な敷地はまだ造成中)やレインボーブリッジや東京ビックサイトや、その他何が入っているのかナゾの近未来的な建造物の数々を通り抜ける。都市工学の粋をきわめて設計したであろう道路とモノレールと地下鉄と高層ビルが華麗に交錯する街並み。

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これでも開発の初期段階にすぎないらしい


メタル色に輝くビルの一階がガラス張りのジムになっていて、マシンを使ってジョギングしているお金持ち(じゃないかな、たぶん)の姿が見える。うねるような湾曲形状の巨大なビルも。もうSFの世界だ。スターウォーズに出てくる惑星コルサントの実写版。
 
バスの窓から未来の世界を眺めながら考えるのは、「あの生垣の間なら野宿できそうだな」というようなこと(笑)。通勤する人たちを見上げるホームレスの目だ。

いやこんな世界もあるんだ~(すごい)という新鮮な感動。おのぼりさんと出家というダブルの目線で見上げる世界。フェリーに乗る前に元を取った気がして大満足(笑)。


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レインボーブリッジが見える 未来都市



いざ、乗船。一人で乗り込む人も、小さな子供連れの家族もいる。ペットと過ごせる個室もあるそうだ。

私が借りたのは、カプセルホテル的な共同スペース。小さなブース(寝床)があって、電源もあって。ラウンジには机も自販機もあるから、時間を過ごすのに不自由はない。浴場やシャワールームもあるし、トイレはウォシュレット付きの最新設備。かなり贅沢な造り。時代は進んだものだ。でも、ほんとの豪華客船は、この船の比ではないらしい。これまた別の世界。

舟は東京ゲートブリッジの下を潜って、海原を進む。有明、晴海、築地の明かりを一望できる。宝石を並べたかのような輝きぶり。


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さあ出航!

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東京の夜景を楽しめる絶好の出航時刻(午後7時)

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東京ゲートブリッジを潜る



羽田空港に発着する飛行機が、夜の空にライトを明滅させながら行き来するのが、頭上に見える。海を走る風と、潮のにおいと、陸のきらめきと、夜空を飛ぶ未知の飛行船と。今が西暦3000年と言われても信じてしまうであろう未来の景色。あれは土星観光に向かう船で、あれは恒星間旅行に向かう宇宙船――そんな時代も、いずれやってくるのだろう。
 
平和と繁栄が続く未来。千年前の人類は戦争ばかりしていた。そんな歴史もあった。そう言えるような時代が、いつか来るのだろうか。
 

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宇宙飛行船といわれても信じてしまうであろう完璧な未来の光景
 


2025年7月末

『怒る技法』オーディオブック配信開始!


いよいよ『怒る技法』オーディオブックの配信が始まりました(2025年8月1日)。
 

『反応しない練習』『これも修行のうち。』『大丈夫、あのブッダも家族に悩んだ』に続く、

著者・草薙龍瞬による朗読シリーズ、第4弾です。
 

いつものように、ついついサービス精神(←慈悲の心の世俗バージョン)で、笑える(←本人は後悔する)演出や、ボーナストークの特典もついています。楽しくて役に立つ、充実のトラック。

本とは違う臨場感が味わえるはず。活字だけでは読み取れない深いニュアンス(意味合い)も、声を通してなら伝わります(聴く側からすれば、「そうか、そういうところを伝えたかったのか」という)。


足かけ1年半以上・・ずいぶん時間がかかりました。手がけてくださった皆さま、ありがとう!

ここからアクセスできます(←クリックしてください: 試し聴きもできる様子です^^)

いざ発進(配信)!


怒っていい。でも正しく

今の時代に伝えなければいけないことを、
著者一杯の思い(応援)をこめて



2025・8・1